なんかいウェブ研究所

「無意味な伏せ字」の存在意義について

ネット上の様々な場所で、タイトルのような「伏せ字」をよく見かけます。

吉○家」「ファ○マ」「モ○スト」「マイ○ラ」「ミ○キー」......

上のようにGoogle検索をすると無数に出てきます。

私がこのような伏せ字を見る度にわざわざ伏せ字にする必要はあるのか?という疑問を感じていました。

伏せ字にしても、知っている人が見ればいちいち説明しなくても分かりますよね?

  • 「吉○家」→「吉野家」
  • 「ファ○マ」→「ファミマ」
  • 「モ○スト」→「モンスト」
  • 「マイ○ラ」→「マイクラ」
  • 「ミ○キー」→「ミッキー」

なぜわざわざ伏字を使うのか

伏せ字 無意味」とGoogle検索してみると、私以外にも、このような伏字に疑問を示す人がいることが分かります。

わざわざ伏字を使う理由として、考えられるのは、

  • 企業名や商品名をそのまま出すと権利侵害等の法的責任が発生するから
  • 人前での使用が憚られる言葉だから
  • 関係ない人が検索エンジンから来ないように検索避けをするため
  • ジョーク、あるいは面白さを出すため

です。

他にも、

「相手に悪く思う内容なので遠慮するべきだから」

など色々とあるでしょう。

1. 伏字で法的責任を回避できるか

企業名、商品名、人名等を伏字にすれば、責任回避の効果はあるのでしょうか?

名誉毀損は回避可能か?

例えば、仮に、「吉野家」を「吉○家」と伏せ字にして、その店を誹謗中傷する書き込みをしたとします。

そして吉野家から名誉毀損で訴えられたとします。

では、この時

「吉○家」は「吉野家」のことを指していない

と言えば、名誉毀損を回避できるのでしょうか?

「吉○家」を見て「吉野家」と誰も分からないならば名誉毀損は回避可能でしょう。

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しかし、「吉○家」はそれを知っている人が見れば、「吉野家」を指していると、文脈ですぐに分かるでしょう。従って、「吉野家」を「吉○家」と伏せ字にしていることをを理由に、名誉毀損は回避できないのです

さらに、誹謗中傷の相手が具体的に書かれていなくても、文脈で相手が分かれば、

「会社名はどこにも書いていない」

などとと言っても、それを理由に、名誉毀損は回避できません。

つまり、一文字くらい伏字にしても名誉毀損の回避にはならないのです。逆に、誹謗中傷の相手が誰にも分からないならば名誉毀損にはなりません。

イニシャル、伏せ字での書き込みは、どこから名誉毀損になるの?(ネット誹謗中傷弁護士相談Cafe)

伏せ字にしなければ商標権侵害か?

企業名や商品名は商標登録されているものが多いです。商標名を無断でネットに書き込むと商標権侵害になるのでしょうか?

意味のない伏字を使う人|OKWAVE でも、商標権侵害だと回答している人がいます。

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答えは、基本的に「NO」です。

商標権侵害とは、商標権者に無断で、指定商品や指定役務で、自分の商品やサービスを他のものと区別する機能(自他識別機能)、あるいは自分の商品やサービスの出所を示す機能(出所表示機能)がある状態で、商標を使うことです。

指定商品や指定役務に類似した役務や、類似した商標でも商標権侵害になります。

ちょっと難しいので雑に言うと、他社の商標を無断で商品のトレードマークとして使うということです。

私が非常に分かりやすいと思った説明を下に載せます。

例えば、

「花王石鹸」という名称の石鹸を手に取った購買者は、「これはいつも買っている花王社製の石鹸であって、ライオン社やその他の会社の石鹸ではない」と認識することができます。これが「自他識別機能」です。
 では、「花王石鹸」が実在するのを知っていながら「花玉石鹸」という名称の石鹸を販売したらどうなるか? 購買者は、「花王」と「花玉」とを見間違えて購入してしまうかもしれません。この場合においても、購買者は「花玉」という言葉につられて「いつも買っている花王社製のもの」と認識したのですから、「花玉石鹸」は自他識別機能を発揮する態様で使用されているとみなされます。結果、「花玉石鹸」を製造・販売した者は、商標権を侵害することになります。

また、花王石鹸の名称から、「この石鹸は花王社が作っている石鹸なんだな」と分かります。これが「出所表示機能」です。

一方で、

「吉野屋に牛丼を食べに行った」と使用するのは単なる事実説明であり、筆者が、自分の商品や役務を吉野屋と混同認識させるために使用しているわけではありません。
 つまり、吉野屋に向かっていた客が、このHPを読んで吉野屋と筆者の店とを混同して筆者の店に引き寄せられることはありません。言い換えれば、この場合、「吉野屋」は、自他識別機能を発揮する態様で使用されておりませんので、商標権の侵害行為とはなりません。
上記 2 つの引用とも「無意味な伏せ字」回答 No.23|OKWAVE より

また、このページを読んで、これは吉野家の公式サイトだと誤認することはありません。つまり、「吉野家」は出所表示機能を発揮していないのです。

すなわち、吉野家の例に限らず、ネット上に商標名を書き込んでも、商標権侵害になることはほぼありません。商標名を伏せ字にしてネット上に書き込むのは、商標権侵害の回避としては無駄です。

2. 性的な言葉を伏せ字にする意味はあるか?

「エ○動画」「エッ○」「ち○こ」「セッ○ス」......

このような伏せ字もよく見かけます。アダルトビデオのタイトルにもよくあるものです。おそらく、人前での使用はタブーとされている言葉だから伏せ字にしているのだと思われます。

これについては、私ははっきり分かりません。

法律では、わいせつな文書、画像、動画等(わいせつ表現)を販売したり、公に公開することは明確に禁止されています。

少なくとも、過激な性描写で「ちんこ」→「ち○こ」「セックス」→「セッ○ス」のように伏せ字にしただけでは、わいせつ表現の回避にはならないと思われます。1文字くらい伏せ字にしても元の単語が容易に分かります。

つまり、このような伏せ字に法的な効果はないと考えます。

3. 検索避けの効果はあるか?

検索避けとは、例えば有名人の名前や企業名を掲示板などに書き込むと、その単語が検索エンジンに引っかかり関係ない人がアクセスしてくるから、人名や企業名を伏せ字にするというものです。

昔は有効だったかもしれませんが、今は検索エンジンが高性能化していますので、1文字くらい伏せ字にしても自動で推測されてしまうことが多いです

以下の例でも分かるかと思います。

これは、「マ○クラ」のGoogle検索結果です。元の単語を推測してくれています。さすが、Google先生!

次は「マイクラ パクリ」の動画のGoogle検索結果です。「マイ○ラ」という伏せ字が検索結果の上の方に現れています。

このように、1文字くらい伏せ字にしても、検索避けの効果は低いです。少しは検索に出にくくなるかもしれませんが。

確実な検索避けをしたいのであれば、そのページを完全に検索拒否するか、閲覧者を制限(会員制などに)するべきです。

まとめ

言葉を、1文字伏せ字にしても名誉毀損の回避にならず、商標権侵害でないのに伏せ字にするのも無意味です。性的な言葉を1文字伏せ字にしてもわいせつ表現の回避にもならないと考えられます。

要するに、1文字伏せ字は法律上ほぼ無意味だということです。

これまで伏せ字に否定的なことばかり言ってきましたが、これだけは理解してほしいです。伏せ字を使うのは自由ですけどね。

このような1文字伏せ字が意味をなすのは、ジョークに使用するときとか、面白みを出すときとか、目を引くようにするとき以外考えられません

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